京菓子寸話「緑茶」

緑茶の画像

新茶がおいしい季節です。

八十八夜が終わると柔らかい新芽の茶摘みが始まります。最初の15日間ほどのものを一番茶といい、続いて二番茶、三番茶と、茶園では八月頃まで茶摘みがおこなわれます。 緑茶のすがすがしい味わいと香りは日本の暮らしに欠かせないものです。

和菓子にとっても茶は切っても切れない関係にあります。茶と菓子の幸せは、日本文化の伝統に根ざしています。摘んだ葉をすぐに蒸気で蒸して加熱し、葉に含まれる酵素の働きを抑えて発酵をくいとめ、緑色に保つのが緑茶です。

緑茶には大きく分けて抹茶、玉露、煎茶があります。茶摘み前に茶園に覆いをして日光を遮り、摘み取ったあと蒸し、乾燥させ、茎を取り除いた葉を碾茶(てんちゃ)といい臼で挽いて抹茶になります。同じように蒸して、次に揉みを加えて乾燥させ葉と茎を選別、粉茶のほうが玉露、茎茶がかりがねになります。覆いをしない茶園の葉を蒸し、揉み、乾燥、選別してできたのが煎茶。それに玄米を混ぜて玄米茶、焙じたのが焙じ茶というわけです。

最近、緑茶の健康が注目されています。緑茶の主成分はカフェインとカテキンです。カフェインは頭脳をすっきりさせ利尿作用があります。渋みであるカテキンには抗酸化作用があり、発がんを抑制し血圧を下げ、血中コレステロールを低下してくれ、血糖値の上昇を抑える作用があります。緑茶にはビタミンC、ビタミンE、カロチンなどが含まれていて風邪の予防や皮膚のメラニン色素を抑えて新陳代謝を促進し、皮膚にうるおいと張りを与える効果があるともいわれます。口臭をふせぐフラボノイド、虫歯を予防するフッ素も含まれています。つまり緑茶は老化を防ぐ力強い味方というわけです。

茶は最初、薬として飲用された歴史があります。鎌倉時代に建仁寺を興した栄西禅師が中国から茶種を持ち帰って栂尾(とがのお)高山寺の明恵上人に贈り、栂尾の茶園から宇治の茶園に移されたのが、その後の茶の隆盛の基になりました。栄西禅師は『喫茶養生記』に「茶の養生の仙薬なり。延命の妙術なり」と説いていますが、現代科学に照らしても的を得ているといえましょう。

鶴屋吉信のお菓子にも、「こだわりの宇治茶を用いた羊羹「鶴屋吉信ようかん 抹茶」や夏の定番冷菓「本蕨 抹茶」等に、お茶が使用されています。

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